夏を快適に過ごす『気化熱』の活用法


夏も暑さを増してくると、よく晴れた日、道路や庭先に水をまく光景を目にするようになります。これは『打ち水』といって、夏を涼しく過ごすための工夫のひとつです。

暑い日といえば、冷たい飲み物がほしくなりますね。缶ジュースや缶ビールを、濡らしたキッチンペーパーで包んで冷蔵庫に入れておくと、素早く冷やすことができるというのは、知っておきたい小技のひとつ。

ここでクイズです。何の関係もなさそうな、この2つの事柄には、実は共通点があります。それはいったい何でしょうか?

夏の暑さを乗り切るこれらの工夫、さっそく解明してみましょう。

涼を得る伝統文化『打ち水』


打ち水とは、道路や庭先などに水をまくことを言います。土埃を抑える、夏の場合は暑さを和らげるといった効果があり、日本では江戸時代から行われている伝統文化です。

打ち水をすると、見た目にも涼しいですし、実際に周囲の気温が少し下がります。

近頃は、都市部の気温が郊外に比べて高温になる『ヒートアイランド』が問題となり、その対策として積極的に打ち水をする活動も行われています。

缶ジュースを素早く冷やす技

缶ジュースや缶ビールを買ったはいいけれど、「冷蔵庫に入れるのを忘れた!」なんてことはありませんか? 気づいたときに冷蔵庫に入れても、冷えるまでに数時間かかります。

でもすぐに飲みたい、そんなときに、素早く冷やす方法があるのです。

用意するものは、キッチンペーパーだけ。キッチンペーパーを水でよく濡らし、缶を包んで、冷蔵庫に入れてみてください。わずか10分ほどで、飲み頃まで冷やすことができます。

2つに共通する物理現象とは?

打ち水と、缶入りの飲み物を冷やす方法に、共通することは何でしょうか。実は、同じ物理現象を利用しています。

冷たい水で濡らして、その温度差で冷やそうとしている? その効果も少しはあるでしょう。しかし、それ以上に影響を与えていることがあるのです。

打ち水をしたとき、その水は徐々に蒸発していきます。濡らしたキッチンペーパーの水分も、蒸発していきます。このとき、つまり液体が蒸発するとき、周りから熱を吸収するというはたらきがあります。

打ち水は地面から、キッチンペーパーの水分は缶から、それぞれ熱を吸収して、水蒸気になります。

熱を吸収して蒸発していくということは、それに接していたものの温度が下がるということ。打ち水の場合は地面の温度が下がり、その場所の気温が下がることになります。濡らしたキッチンペーパーで包んだ缶の場合は、缶の温度が下がり、内側に接している飲み物の温度が下がります。

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なぜ熱を吸収していくかというと、液体が気体になるためには、熱が必要でからです。水が沸騰すると水蒸気になってどんどん蒸発していきますが、お湯を沸かすためには、火にかけて熱を与えますね。水を放っておくだけでも少しずつ蒸発していきますが、火によって大きな熱を与えると、蒸発を加速させることができます。熱によって液体が気体になる、というのが、目に見えてわかる形の例です。

液体が気体になるときに必要な熱を『気化熱』といいます。打ち水もキッチンペーパーで包んだ缶も、気化熱による吸熱作用を利用して、接するものの温度を下げているというわけです。

『気化熱』はこんなところに利用されている


気化熱を身近に感じる例があります。お風呂あがりに「早く体を拭かないと風邪を引くよ!」とお母さんに言われた経験や、実際にどんどん体が冷えて寒い思いをしたことはありませんか?

体が濡れたままでいると、体温を奪われてしまいます。これも気化熱の仕業。体の表面に残った水分が蒸発するときに体から熱を吸収していくため、体温が下がるのです。

気化熱はいろいろなところで利用されています。

たとえば、最近、街の中でよく見かけるようになったドライミスト。とても細かいを空気中に散布して、気温を下げようとするものです。

体が濡れるのでは? ベタつくのでは? と心配にもなりますが、小さな霧がすぐ蒸発していくので、濡れるという感覚はありません。蒸発の際に、周囲の空気から熱を吸収するため、気温が下がります。

食品を冷やしておくためにドライアイスを使うのも、気化熱を利用していることのひとつ。ドライアイスの場合は固体から気体になりますが、これも気化と呼びます。気体になるときに熱を吸収していくので、食品を冷たく保っておくことができます。

ほかには、エアコンや冷蔵庫にも気化熱が利用されています。私たちの生活に、気化熱による吸熱作用は、なくてはならない現象なのです。

気化熱によって温度が下がる理由

夏によく行われる打ち水や、濡らしたキッチンペーパーで缶を包んで冷蔵庫で冷やす方法は、共に気化熱による吸熱作用を利用したものだとわかりました。水分が蒸発するときに、触れるものから熱を吸収していくため、温度を下げるというはたらきです。

温暖化が進み、夏の暑さは年々厳しくなっています。そんな中、ちょっと打ち水をして、気化熱によるはたらきを肌で感じながら、涼を得てみるのはいかがでしょうか。

また、濡らしたキッチンペーパーで缶を包む方法は、冷蔵庫から出した状態でも活用できます。飲み終わるまでの間も包んだままにしておけば、包まない場合よりも冷たさを保つことができます。

この現象を利用したボトルクーラーも市販されていて、アウトドアなどで活躍しているそうです。

こんなふうに気化熱をうまく活用して、暑い夏を快適に過ごしたいものですね。

※この記事ではわかりやすく説明するために、一部、語弊のある表現も含まれておりますことをご了承ください。身近な現象を理解し、物理学に親しむ機会となれば幸いです。

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